安心できる孤独
ハルカ
概念さんのOFFになれるコツを教えてください。
概念
温浴施設に行く。良いスーパー銭湯があるといいなと思うんです。色んな要素があるじゃないですか。岩盤浴もあるし、マッサージもあるし。何ならそういうスーパー銭湯を作りたいって思っているぐらいで。
ノム
良いスーパー銭湯の「良い」ってどんなところ?
概念
休憩所が広い。ダラダラできる。コンテンツがいっぱいある…
ノム
広いのめちゃ大事。
概念
スーパー銭湯の広い休憩所が大好きなんです。理由は…孤立しないで孤独になれることかな。独りの時間は持てるんだけど、完全なる独りぼっちではない。その場所に人が蠢めいているけど、介入してこない同じ種がいるということは、安心できるし気ままに過ごせる。ぼーっとしたり、ダラダラしたり、考え事したり、すごく大事な時間だなって思うんですよ。
家の中で独りで居るのが好きな人もいるけど、それが孤独が精神的に大丈夫なのは、外界との繋がりがある場合だと思ってます。気軽に友人や家族と連絡できるとか、あいつは今こんなことやってるんだろうなとかを、簡単に想える、イメージできる関係性を持っているということなのかな。だけど、物理的にも他者が居なくて、心の中にも誰も居ない場合だと、超孤立すると思うんですよ。そうすると「自分って居てもしょうがないな」みたいな気持ちになりますよね。
物理的にも心の中にも誰かが居てくれている、だけど自分は自由。みたいな状況がすごく重要な気がします。良いスーパー銭湯はそれができるような気がする。
ハルカ
OFFって、絶妙なバランスでできてますね。
ノム
広い、孤立しない、孤独になれるところで言うと僕は良いホテルのロビーでOFFになってる。
概念
良いホテルのロビーも、広いし、誰も介入してこないですよね。冒頭で話したヴィパッサナー瞑想の時間でも、やはり施設内に複数の同種が居るから続けられた。独りで山籠りして瞑想やるのは強靭なメンタルの持ち主じゃないと無理だな…。「安心して孤独になれる」と言うのか、それがやっぱり1個の肝かなと思うんです。
デフォルトモードネットワーク
概念
ハルカさんのOFFはどんな時?
ハルカ
施術の時に使う湧水を汲むために、湯来町への1時間程の道のりを車で往復する時でしょうか。
ノム
時間が決まってることと、慣れた道って言うのがOFFと関係ありそうね。
だって初めての道は注意せんといけんくない?
概念
僕も思ったんですけど今のハルカさんのOFFは車の運転じゃないですか。僕も自転車を漕ぐとか、シャワーを浴びている時とか、何かしらの動作をしてるんだけど余裕ができるんですよね。「慣れている」というのはOFFと密接に関係してますね。
この道をどう曲がるんだっけな?とか、次何があるんだろう?とか、未知が少ない状況。大体全部分かっている事をしている時は、意識的に何もしない無の時間より、何かに集中しようとする時よりも、脳はきっと自由になるんですよ。デフォルトモードネットワーク(DMN)っていうのは、その事のような気がするんですけど。
そのDMNは、深く思考していない状況で、安静状態にある脳の神経活動を指しています。オンとオフを適切に切り替える役目もあるらしく、 脳内の情報が整理され副次効果が生まれやすいです。
以前に僕が作詞をしてた時、自宅の机に向かってるとロクなことがない。「歌詞書いたるで〜!」っていう感じ。「アイデアの生み出し方は、新しいことを考えるんじゃなく、今までの経験と経験の意外な組み合わせなんだ…。」とか意気込んで机に向かってるわけですよ。けども、全然クソつまんない歌詞とメロディーしか出てこなくて。いわゆる質の高いひらめきは、全然降りてこない。だけどそのうち「もういいや時間だし」ってなって、自転車乗って駅まで向かっている間にポンって良いアイデアが出てきたりするんです。
ノム
そうじゃね。脳が無意識なんだけど活動しているような。例えるならば車のアイドリング状態。そう、まさにニュートラル。
概念
慣れている行動は、それに切り替わっているんじゃ無いかな。意識することが多い行動と、無意識でもできる行動では脳の働く場所も変わっている。ある種の枠が外れて思考が自由になるみたいな。シャワー浴びる動作も何も考えてないじゃないですか。「よーし、次は肘を洗うぞ〜!」みたいな。
一同爆笑。
概念
そういう訳ではないっていうね。
ハルカ
水汲みの運転以外にも、そういう時間を意図的に作りたいな!